視覚のキオク

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「で?好みだったんだろ?あの人。」 ハァ――― こんな風に心と体で確かめあった後に言う言葉? 何度目よ?その話。 見た目は好みだって言ったけど。 好みだからなんだって言うのよ。 「そうよ!だから何?」 「なのに、なんで…」 「なんで好みに行かないで俺の所に来たのかって?」 困った顔をする彼に、 「だから言ったでしょう?好みだからって言ってそれを好きになるとは限らないって」 大体ね。 顔の好みなんて所詮入口でしかない。 中身が好みかどうかなんてわからない。 けれど、この同僚は中身がすでに好みだったんだから仕方がない。 それを気付かせてくれたのは彼だったけれど、それはずっと内緒にしておこう。 「じゃ、俺は好みじゃないの?」 「うん、まったく。」 事も無げに言う私にしょげた顔をするそんな姿も愛しくて。 「でも、あれよ?」 「…なんだよ」 まだなんか不服そう。 けど、そんな想いなんてずっとさせるつもりはない。 だってせっかく心が通じ合ったのに。
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