視覚のキオク

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「だから…好きになった人が好み。ってやつ」 「随分と都合のいい言葉だな」 あれ、この言葉でも機嫌がなおらないなんて。 隣で横になっている彼に覆いかぶさるようにして言う。 「好みなんてどうでもいいじゃない。」 「よくねーよ…」 「なんで?」 「好みの奴が現れたら、おまえどっかいくだろ?」 なんとも私の尻軽なイメージがある事か。 大体こんな風に体を重ねるのは、彼氏以外で他に今まで居ない。 それなのに…… 「捕まえとけばいいじゃない」 「言ったな?」 「私の好みはこの人ってずっと私に言わせるようにしておけばいいじゃない?」 「ふぅーん」 あ、なんか言葉選び間違った? 彼は意地悪そうに微笑むと、くるりと私の視界を反転させた。 ―――そう、そのまま私が下になる体勢。 「んじゃ、遠慮なく」 そう言って軽く音を立てて口付けた。 いや、あの。 さっき確かめ合ったよね? もう十分…… 「な、に?」 「いや、きちんと捕まえておこうと思って?」 だから何で疑問形? 捕まったのは 私だったのか 彼だったのか その答えなんてもうどうでもよかった。 ただわかる事は 彼が“今一番の私の好み”の彼であるという事、だけ。 END
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