味覚のキオク

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『はいっ、もしもし』 「今、大丈夫ですか?」 『はいっ、もう寝るだけなんで大丈夫ですっ』 聞こえてきたのは愛しい彼女の声。 ワタワタしながら、受け答えしている様子が手に取るように分かる。 クスッと笑ってから 「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ?」 そう言ってやると彼女はやっと落ち着いた様子で話し始める。 そんな彼女の姿が目を瞑ると浮かんでくる。 忙しく毎日働いている中で、唯一の癒しの時間。 遠く離れて暮らしている彼女とのあまりにも短い、けれどとても大切な時間。 彼女を手に入れて以来、こうして離れていてもどこかで彼女を感じていたい。 こんなにも自分は感傷的な人間だったのかと苦笑する。 せめて… 彼女が寝る前の数分間を共有したい。 そんな自分のワガママに彼女をつき合わせている。 彼女より4つも年上で いい大人だというのに―――
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