那の章~断れない武器

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もっと話していたいのに、こう言う時に限って道路も空いてて、 スイスイと走れてしまうなんて……神様のイジワル。 「そろそろ近い感じかな?」 「あ、えっと、次の角を左に入った先で  停めていただけたら……」 「オーケー」 角を曲がってすぐの路肩に車を停めると、 セシルさんが思い出したように話し始めた。 「あ、そうだ……ねぇ結子。  嫌じゃなければ、オレのこと今後  那智、って呼んでくれない?」 「……えぇぇっ?」 「セシルはね、実際オレのミドルネームではあるんだけど、  仕事で使ってるからさ」 「で、ででででもそんな、馴れ馴れしいこと!」 「……ダメ?」 今日二回目の、すがるような瞳に見つめられて 顔が一気に熱くなる。
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