上京

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そんな東京に来た意味を忘れ、ただひたすら働かされながらも少しずつ苦労というものがわかってきた。 「疲れたー」 「お疲れ様!ハイ、コーヒー」 同い年の職員である小林奈々子。 人懐こく可愛らしい雰囲気だが、話し方や行動は雑。 よく言えばサバサバしているというのだろう。 今1番仲良くしている人物である。 「ありがとう、ナナ」 「いーえー。どう?調子は」 「お陰様で、英語がわかんねえ」 「方言使うってことはネイティブ、ネイティブ」 そんな冗談も上手い彼女は能面結城を嫌っているらしい。 「皆嫌ってるよ、あの人性格悪いし感じ悪いのに仕事出来るから社長のお気に入りで優遇されてるみたい。ああ、そうだ。人1人殺してるって噂もあるみたい」 まあ無いと思うけど無きにしも非ずと奈々子は苦笑いを浮かべる。 また彼女曰く我が社の災いとまで言う。 …要注意人物なのは良くわかった。 その反面、気になる存在でもある。 本当はただそう思われてしまっただけじゃないかなと甘く見てしまう理由はないはずだが、不思議とそう感じるのだ。
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