プロローグ 彼女は壇上で愛を叫ぶ

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 春の暖かな陽気の中で夢と現実の間を何度も往復していた青井空翔は、まぶたの外側の騒がしさに気付いて目を覚ます。  入学して二日目。新入生は部活動説明会との名目で体育館に集められたわけなのだが……なにか様子がおかしかった。  先程までは各部活の部長が特に面白くもない話を延々として、それをほとんどの新入生が半分寝ながら静かに聞いていたはずだ。  それが突然このざわめきよう。一体どうしたというのだ。  俺はまだ寝ぼけたままの頭をフル回転させ、この状況をなんとか理解しようと試みる――が、すぐに諦めた。ほぼずっと寝ていたせいで情報が少なく、いくら考えても無駄だと悟ったからだ。  こういうのは誰かに聞くのが手っ取り早い。  そう思って眠気眼を擦りながら周りを見渡す。しかし、こちらもすぐに手詰まり。入学式からまだ二日目ゆえに同じクラスと言えど周りは知らない奴ばかり。気軽に声を掛けれるが見当たらないのだ。  さて、どうしたものか。 「今から野球部の部活説明だよね?」 「そのはずなんですけど……」   打開策が見つからずに頭を悩ませていると、ふと、そんな会話が耳に入った。どうやら前に座っている太っちょ君と、その前の眼鏡君がこそこそと何やら話しているようだ。  なんという好都合。これは自然に会話に入って状況を説明してもらうチャンスだった。 「えーちょっと。えっえっと……前の席の君」 「僕ですか?」  太っちょ君が振り返る。 「いや……やっぱりいい。チェンジで。その前の眼鏡君、今の状況を説明してほしいのだが」
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