プロローグ 彼女は壇上で愛を叫ぶ

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一方、どうやらステージの中央まで来たらしい神代は、足元に台座を置いてその上に立っていた。そしてマイクを自分好みの高さに合わせているようだった。 「あーテステス。ん? これちゃんと入ってるのか?」  そう言いながらマイクを殴り始める神代。ゴツゴツ!といった不快な音が体育館に響く。  うるせえ! ちゃんと入ってるわ!  耳を塞いで心の中でツッコむ。 「大丈夫みたいだな。あー少し手こずってしまって出てくるのが遅くなってしまった。すまない」  何に手こずったんだよ! おい、まさか“悲鳴が聞こえた”って殺ったのか? 野球部の部長を殺ったのか!……いや、いくら神代でもそんなわけ…… 「しかし、台座があんな形で役に立つとは……流石の私でも思わなかった」  殺ってるぅぅぅ!あいつ間違いなく殺ってるよ! 凶器は血の付いた台座だバーロー! 「それはさておき、自己紹介がまだだったな。私は神代夢希。今年からこの県立高校青空高校に通うことになった、ピッカピカの一年生だ」  いやいや! さておけないだろ! 何さらっと自己紹介始めてるわけ? バカなの? 入学したてのところ悪いのだが、どうみてもお前は今日で退学だな! 「そんな私から青空高校野球部を代表して皆に伝えたいことがある。心して聞いてくれ」  ふぅ……落ち着くんだ、俺  自分にそう言い聞かせて気持ちを落ち着かせる。神代の発言にいちいちツッコミを入れていたら、いくら声に出してないと言えどとてつもなく体力を使ってしまう。  それにしてもいきなり何なんだあいつは。そもそも何故神代が野球部の代表なのだ。  ……まあ、考えても無駄だろう  そう割り切ることにして、神代の動きに注視しながら次の言葉を待つ。  すると、神代はなにやら両手を広げて大きく息を吸い込んでいるではないか。   これはやばい―― 《ベースボールラヴッ!》  そう思ったものの時すでに遅し。次の瞬間には神代の割れんばかりの声が体育館に響いていた。それはハウリングを伴ってその場にいる全員の耳を襲う。
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