パトロール、男、亡命

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男は少し冷静さを取り戻したようで、さっきまで荒かった呼吸が落ち着いてきた。 「一体何があったんだ?誰かに追われていたのか? ガーネットが男の肩を支えながら尋ねた。 1度大きく息を吸った男は 「お、追われているんだ。殺されそうなんだよ!この国に亡命をしたい!た、助けてくれ!」 「亡命ってあんた外国人か?」 「そうだ、近畿共和国から逃げてきたんだ・・・。だが、奴らに追われて」 近畿?追われている?サツキは妙に思った。世界大戦が終わって20年になるか。 だが、近畿共和国は中華連邦の支配下にあるとはいえ、政治、経済ともに安定している。言論の自由がやや制限されているとはいえ、ここ東京市国とさほど変わらないだろう。 サツキはガーネットと顔を見合わせた。 だが、明確に亡命を希望している以上、保護して司法局へ引き渡さないと。 サツキがガーネットにそう声をかけようとした時だった。 車が勢いよく3人の前に飛び込んできた。 咄嗟に、男を抱きかかえ飛び退くガーネット。サツキも飛び退く。 車の窓が開き、鈍色に光る銃口が現れる。 咄嗟に車の影に隠れようとするガーネット。 乾いた音が辺りに響く。 サツキは帰宅するつもりだったので、銃の携帯をしていなかったことに気づく。 ガーネットがブラスターを抜き、車に向かって反撃をする。 辺りにブラスターのエネルギー弾が車に当たる音が響く。 車のタンクにエネルギー弾が当たったのか、ボンと乾いた音が辺りに響く。 車は炎上し始め、社内から全身黒ずくめの服装にフードを目深に被った男が1人飛び出してきた。 ガーネットに銃口を向けると、ガーネットは男に向かって飛びかかった。 その距離おおよそ5mほどはあったが、体の各所が強化サイボーグ化されているガーネットにとっては軽く飛びかかれる距離だった。 黒ずくめの男は逃げ出す素振りをしたが、ガーネットが跳びかかる方が早く男を後ろから締め付けた。 首を右腕で締めつけ、左手で男の左腕を締めあげた。 「貴様、何者だ!」 ガーネットが強い口調で言葉を発したときだった。 男は信じられないことに首を絞めているガーネットの右腕を掴み、軽々と外す。 強化された腕をいとも簡単に外されたことに、ガーネットは驚きとっさに投げられないよう体を引いた。
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