monster

プロローグ

ー江戸時代　末期　12月ー

徳川一族が関ヶ原の戦いで天下を収めた400年近く続く長寿幕府のあった時代。

人々は時として姿を見せる暗闇を恐れ、優柔不断に表情を変化させる天へと敬いの心を掲げ自分たちとは違う特別な存在の事を理解していた。

人間を含め、生物に当てはまる物とは物理的にも精神的にも異なる[現象]に近いそれはこの時代にもっともその数を増やしていく。

物を大事にしなければいけない、盗みをしてはいけない、泥まみれで家に上がってはいけない。

子をぞんざいに扱ってはならない、教訓や諺にも近いそれらは人間の戒めが生み出した。

変な音が聞こえる、人が突然倒れて動かなくなった、物が何時の間にか無くなってしまった。

背筋が寒くなる、と言うような当時の科学では理解できない事からもこれらは生まれ出た。

世界に混沌と存在し、有って無い矛盾が正しい彼等の行動は言葉巧みに人間の心を鷲掴み、惑わせる。

日本に住む人間たちは、そんな不思議な彼らを八百万（やおよろず）と、この世にある全ての物に意志…魂が宿ると考えた。