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坊主の少年の顔は汗だくになっているのに、蒼白で何かを焦って居るように見えた。
「清名様、清名様はどこにおられますか!」
廊下を走りながら、坊主の少年は、一部屋ずつ襖を開けて中を確認して誰かを探していた。
彼が歩く度に廊下には、汗の水滴が落ちて足跡のように残っていく。
坊主の少年が見最後に一番大きな部屋である仏壇がある部屋を開けたとき、初めて反応があった。
「どうしたと言うのじゃ、境内(けいだい)の中では走ってはならんとあれほど言うたであろう?」
広く突き抜けた部屋の最奥、仏像が鎮座する蓮の前で座禅を組む年老いた坊主が口を開いたのだ。
「それともお前は、ワシの話など聞かんとそう高をくくっておるのか?」
皺が深い初老の坊主は、後ろに立つ少年を見もせず静かに言い放った。
袴まで紫色一色に染まった初老の坊主の服装は、彼の風貌をより一層威厳ある雰囲気にする。
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