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桜のトンネルを抜け、一本の桜樹が寂しそうに頂上に生えている丘。魔王が居る謎の城に連れて行かれた丘。
「うん!ここなら誰も居ないね」
どういうことですか。俺は顔を赤くしながら言った。桜宮咲は口角を上げながら俺を見つめる。
「さっき言った通りよ。私の手違いだけど、あなたは私の正体を知ってしまった。なら、あなたに公言される前に私のものにしちゃおうって話しよ」
「契約って……ただの……はじめてのちゅぅ……じゃないですか……俺の……」
あれはただの接吻ではないの。あれは契約。契約、即ち私の下僕になったという事。
“呪印”よ。
「呪印?」
「そう。私の体液に魔法を込めて、それであなたに移す。それだけの簡単な作業で、あなたは私の意に背けなくなる」
こうなることを俺は、薄々感づいていたのか。“魔王”の存在にしたって、この“呪印”にしたって。普通はすぐに信じないだろう。
「あなたの名前は確か……如月くんだっけ?あなたには、入って貰わなくてはいけない部活があるの」
シンセラティ部。
「入部届けも出しといたから。明日、また連絡するね」
また、今度。
俺に拒否権は与えられていなかった。また、今度。また、明日。
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