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母親はにじり寄る怪物から目を逸らさず、自らの腕を掴む青年を振り解き、語気を荒げて叫ぶ。
「早く行きなさい!!衛、恋!!」
そして、青年を突き飛ばし、怪物から顔を二人に向けて優しい表情を浮かべた。
「ちゃんと妹を護ってあげてね、お兄ちゃん」
刹那、怪物は好機と見たのか、筋肉で膨らむ後ろの二つの脚で地を蹴り、その巨体で母親目掛けて飛び掛かる。
青年は妹の小さな手をギュッと強く握り、その場を駆け出した。
青年は涙で歪む顔を振り向かせることなく力一杯地を蹴り、駆ける。
「ママぁぁぁ……いやぁぁぁぁ」
泣き叫ぶ妹を守る為に、母親の言葉に応える為に。
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