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だが、現実はそんなに甘くはなかったのだ。
怪物はすぐに青年と少女を追い掛けてきたのである。
怪物の口元や頬は赤く染まり、所々身体にも斑な赤い染みがあるところを見ると、母親はもう絶望的だろう。
その身を盾に、我が子を守ろうとした母親の行動は、我が子に充分な逃げるための時間を用意することすらできない、歯痒いものだったのだ。
だが、青年は走る。
弱い妹の手を握り、ひたすら走る。
母の思いを無駄にしない為に、最後の願いを叶えるために全力で地を蹴った。
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