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懸命に妹の手を握り走る青年だったが、運悪く袋小路へと入ってしまった。
「お兄ちゃん……」
不安で表情を歪める妹が、青年の腕に抱き付き弱々しく声を漏らす。
そんな妹に自らの身体を被せ、青年は袋小路の入口を睨み付け、身を構えた。
「大丈夫だからな、恋。お前だけは絶対に守ってやるから」
そして、目を入口から目を離さず、身を構えたままで、妹の小さな頭を撫でる。
「お兄ちゃん……」
妹はそんな兄に縋り付く。
そんな兄妹に近付く気配が1つ。
兄は入口を見る眼をぎらつかせ、妹は恐怖でその小さな身体を強張らせた。
入口を睨み付け、神経を研ぎ澄ます兄の耳に予想外の音が入る。
たったったっ……と、地を駆ける人の足音と、
「誰か……誰かいませんか……?」
そう呼び掛ける、まだ幼さの残る少女の声だった。
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