5.告げられない秘密により。

8/8

686人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
あれからひとしきり泣いた翔は、照れくさそうに俺を見て笑った。 「ごめんね。ありがとう」 「……おう」 「今のでね、月夜のこと信じていいと思えたよ」 「……うん」 「……で、も、まだ、言えない……」 手を強く握りしめて言う翔。 目にはまた涙がたまっていた。 「話そうとすると……こえ、でなくなるんだ……」 「言わなくていいっていっただろ。そりゃ気になるけどさ、言えるようになったら、また聞くよ」 「…………月夜、ありがとう……」 「そんな何度も礼言わなくていいよ」 翔の頭を軽く撫でる。 「わ、ちょ、やめ……」 顔を少し赤くしながら慌てる翔。 ……もう、大丈夫かな。 「なぁ、切りたくなったら絶対俺のこと呼べよ。絶対」 「……うん。呼ぶ」 にへっ、と笑う翔に安心した。 「つか俺らいつまで保健室だよ。ってうわ、もう2時じゃねーか」 深夜の2時とか怖いです。 「そだね、2時だね」 ニコニコしている翔。こいつ余裕じゃねぇかよくそ。 「それよりさ、姉ちゃんの連絡先。俺それ渡したかったんだよ」 「!?月夜のお姉さまの!?はよ渡そう、連絡先はよ渡そう」 「……腐れ男子め」 「腐男子ですから」 いつも通りの翔に戻ったことに安心する。 「とりあえずもう今日はここで寝ちゃおうぜ」
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

686人が本棚に入れています
本棚に追加