7.その傷により。

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俺たちはいつものように遊んでいた。 大輔の家で、皆でゲームをしていたときだった。 「っしゃぁー!勝ったー!」 「うわ負けた!くっそ、翔強いな」 「このゲームでは負けない自信あったしな」 にこにこと笑いながらゲームをしていると、その場にいた一人が呟いた。 「……おい……翔……それ……」 「え?」 俺の座っている座椅子の下に、パックリと割れたゲームのソフト。 それはつい最近大輔が金を貯めて買ったと喜んでいたものだった。 「あ……」 「おい……翔。何してくれてんだよ。弁償してくれんだろうな」 いつも温厚で、優しかった大輔が俺をギロリと睨み付けてきた。 その時の俺は、割ってしまったことをあまり重大にとらえていなかった。 「あ、ははっ!ごめんって。また買えばいいじゃんか。中古で安く売ってるだろ」 その一言が、大輔を怒らせた。 「ふざけんなよ?高かったんだよ、これは。お前さ、ちょっと調子のりすぎなんじゃねぇの」 「え、と、だからごめんって」 「うっせんだよ!」 その場にあったコップを叩き割る大輔。 大輔がクラスで大きな権力をもっていたのは、これが理由だった。 キレたら手をつけられず、敵はとことん潰す。 ……今まで味方だった人が、全員敵になった瞬間だった。
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