7.その傷により。

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いじめはなくなったけど、俺は一人になった。 誰にも見向きもされず。 だからといって何かされるわけでもなく。 何故だろうか。 俺はそれがいじめられていたときより辛かった。 大輔と友達になる前に戻っただけじゃないか。 毎日暴力を受けるよりかはましだ。 そう思っていたのに、手首の傷は増えるばかりだった。 そして気付いた。 いじめられているときは、『俺』という存在をみてもらえていた。たとえそれがどんな感情だとしても。 でも、今は? 誰にも見てもらえない。 誰にも認められていない。 誰にも存在を肯定してもらえない。 それが恐ろしかった。 『俺』という存在が消えてしまいそうで。
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