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ある日、こんな質問をされた。
「ねぇ、佐藤くんの初恋っていつ?」
美術部の部室で、
課題の石膏デッサンをスケッチしている時だった。
「初恋?」
問いに答えるために視線を青年マルスから隣の女子へと移した…瞬間、クラクラと眩暈に似た感覚に襲われた。
その僅かな時間の中で、
僕の脳裏にはある人の横顔が鮮明に写った、ような気がした。
「中学の時、かな」
だから思いついたまま、
浮かんだままの空像を懐かしんで答えた。
「中3の頃だったかなぁ、好きだって自覚したときにはもう失恋しちゃってたけど」
「なにそれ?彼氏持ちの子すきになったとか?」
「…んー。誰かと付き合ってはなかったんだけど、
片思いしててその相談うけてたからさ。
…言えなかったんだ」
こころなしかキャンバスの線は弱々しくぶれ始めている。
、
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