はつこい

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その線の上を、 幾つかの線で上書きして潰していく。 「そういう松嶋さんは初恋っていつなの?」 質問の、答えもちゃんと言わないで質問を返したのは、自分の中で未だその初恋をひきずっているからだろう。 「えー、私はぁ…幼稚園の時のタカくんって同じキリン組みの男の子だったな~」 「へぇー。はやいんだね」 返答に興味がないから、テキトーに相槌を打って目の前のマルスに集中する。 こんな何気ない質問で、 心の中はとても混乱しているのを悟られまいとしたいのか。 …僕は、なんだか焦っていた。 中学生だった頃に、 ココロだけがタイムスリップしてしまっているようで。 それに松嶋さんは、まわりにいた部員達は 僕の声が聞こえるところにいるのだから。 静かな部室内の囁き程度の会話だって筒抜け。 そんな中で、彼女のように名前まで出して答える気にはなれるワケもない。 、
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