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「哀しいの?」
少年は私に聞きました。
私は驚いて、その少年に尋ねました。
「どうして私が哀しいってわかるの?」
「夕焼けをそんなに一生懸命眺めているなんて、哀しいに決まっているよ。」
と、少年は答えました。
「君、どこの子?」
私は聞きました。
「この辺の子?」
「ううん、違うけど、そんな事、あんまり大事な事じゃないよ。星から落ちて来たのかもしれないし、地面の下から来たのかもしれない、風に乗って来たのかも、もしかしたら、あんたの好きな夕焼けのところからかもしれない。」
からかうように言うと少年は、その後で私を一瞬じっと見つめると、ふっと笑い、
「あんたには羽根があるね。」
と言って、くるっと向きを変えると今度はいきなり、さっきの角に駆け込んでしまいました。
私は、何だか馬鹿にされたようなみじめな気持ちになって、また哀しくなりました。
その時、私は実に簡単に哀しい気分になれるような精神状態だったのです。
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