†夢見がち†

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休憩室で偶然一緒になったって、声をかけるにも何を言えばいいかわからない。 いきなり話しかけられたってひくよね、普通。 そうして15分、無駄に過ごして私は外していたレースの三角巾を頭に乗せて結んだ。 カステラ屋、確かにね。 改めて自分の制服を見下ろした。 レースの三角巾以外は紺色の事務員のような制服だから、ぱっとしないのは認めざるを得ない。 美里の制服のようなどこかの国の民族衣装のような雰囲気も少し恥ずかしいけど、どうせなんだからそういう思い切ったデザインも着てみたい。 私だってそう思うけど。 制服で就職決めるほど子供ではない。 それだけだ。 ポケットにいれてあるコンパクトで前髪をチェックして、もう一度彼をチラ見。 横、通りがてら、お疲れ様ですって言ってみようかな。 いや、でも寝てるし。 結局、彼の真横を素通りして、休憩室を出る。 ときどきバックヤードですれ違う時、挨拶くらいはする。 今度こちらから話しかけてみようかな。 頭の中でシミュレーションしてみたり。 そんな自分が少しバカバカしくて、ぱちんと両頬を挟んだ。 考えただけで頬が緩むのと、少しの不安感。 なんだか、初恋を思い出させる。
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