†夢見がち†

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そうね。 恋は突然落ちるもの。 たかが熨斗紙一枚。 ちょっと綺麗な男の人の「綺麗ですね」ってフレーズにうっかりときめいて、字を褒められたっていうちんまいエピソード一つで、もしかしたら恋かもしれないなんて。 思っちゃう乙女な自分がひょっこり顔を出すこともある。 だからこそ、私は今、出会って10分のこの男に手を握られてるんだろう。 「いきなり、こんなこと言ってごめん。でも、本当に俺、一目惚れしたみたいなんだ」 居酒屋チェーン店の、座敷で、全く会ったことのないメンバー数人の、ぴたりと止まった会話。 反対隣で、いや私は強制的に左を向かされてるので背後。 美里がはっと息を飲むのがわかった。 いや、はらはらしてるとかじゃなく、笑いを堪えてるんだと思う。 「綺麗で優しそうで、儚げで。守りたいって思ったんだ」 ぶっは! 禁句満載の口説き文句にこらえきれず、遂に美里は吹き出した。
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