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「……、今なんて言ったの?」
「えっ……だからさ…思ってたイメージと違うっていうか、もっと優しくてのんびりした子だと思ってたから……」
彼は、今まで聞いたこともないほどの私の低音に、少々びくついてるのがわかった。
「恵美、本当はこっちが申し訳なくなるくらいしっかりしてるし、行儀にうるさいっていうか……」
その割にはっきり言ってくれる。
歩きタバコ、注意するのって当然じゃない?
いらっ……
今までつき合った人にも、友人にもよく言われたフレーズに私はもう苛立ちを隠そうとも思えなくなった。
「それに、最初百貨店の洋菓子で販売員してるって聞いた時に、ケーキとかマカロンとか可愛いお菓子をイメージしてたのに、実際はカステラ屋でそれも思ってたのと違うっていうか」
「……は?」
その言葉に、私は愕然として、彼を見た。
それ。
なんか私の人格と関係あるの?
そう思えば、こんな人間と付き合っていた自分が急激に情けなくなって、やるせなくて。
ぶちっ……とか、頭の中で効果音がした。
これが、浮気した彼の言い分だ。
この瞬間彼氏ではなくなったけど。
もう口論するのも面倒だったので、平手だけ返しておしまい。
踵を返して走り出してから、それでも少しだけ涙が出た。
少し頼りない人だったけれど、好きだと思ったから付き合ってたのに。
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