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「字。丁寧に書いてもらって。筆耕に頼むと、混んでる時って微妙に雑だったりしますよね」
書きあがった熨斗を、彼に向けて差し出すと
「あ、やっぱり綺麗だ」
「ありがとう。こないだ筆耕テスト受かったばっかりなの」
美人だって顔を褒められるより嬉しかったのは、例の彼と別れたばかりだったからかもしれない。
「これから、こっちに頼みに来ようかな。筆耕行くより近いし」
悪戯っ子みたいに笑う彼は、驚くくらい整った顔立ちで。
歩き去る背中を見る私は自然と、顔が綻んだ。
丁寧に書いた仕事を、筆耕よりも良いと褒められて。
単純だけど、内側を認めて貰えた気がしたから。
まぁ、実際にはそれきりなんだけど。
彼の店は販売員の数も多いし、筆耕の代理で書ける人も数人いる。
私のところに頼みに来たのも、偶々なんだろう。
だけど、それから彼が視界に入ることが多くなって。
何かきっかけがあればいいのに、なんて思ってしまう。
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