§ その理由 §

2/36
5410人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
年末年始は福袋商戦。 三が日が過ぎて少し仕事も落ち着くが、今度はすぐにバレンタイン商戦が始まる。 川崎君とは相変らず、会える日は夕食デート。 デートと言っても良いのか引け目を感じるくらい、何もない。 バレンタインが終わったら、また上手く休みを合わせて1日遊びに行こう、と口約束はしているものの。 それまでは、ろくに会えそうもない。 今日から地下以外に7階のイベント会場で、バレンタインフェアが始まるからだ。 昼休憩に入ってすぐだった。 社食に向かおうか外に出ようか、バックヤードの通路で悩んでいた時みさが私の後を追ってきた。 「恵美、良かった居たー!」 「みさもお昼?じゃあ一緒に外行く?」 毎日社食じゃ飽きるので、たまに外に出てとることがある。 先日、良さそうなカフェを見つけて一度ランチに行ってみたいと思っていた。 「うん、外でもどこでも!それより、パンストの替え持ってない?見てこれー」 制服の裾を少し持ち上げて、片足を掲げてみせた。 右足のふくらはぎ辺り。 既に乾いてはいたが、何かに濡れたような跡がありうっすらと赤い色のように見えた。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!