観賞用

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「勘違いは困ります。私はグーム星人です。ちょっと、ここの鉱山を閉鎖しに来ていまして・・・」 「やはり、鉱山でしたか・・・。しかし、閉鎖とは採掘し尽くしたのですか?」 「いや、そういう訳ではありません。ただ、飽きられたのですよ」  グーム星人はそう言うと、ポケットから小石を一つ、取り出して二人に見せてくれた。 「これは・・・」  二人はつまらなそうに取り出されたグーム星人が、この星で採掘していたという鉱石を見て驚いた。  それは、宝石だった。いや、宝石というモノよりも、もっと美しい色合いをしていた。そして、その色は時間の経過と共に、鮮やかに変化した。赤ワインのように深みのある赤い色から、水中に差し込む太陽の光りを切り取ったような鮮やかな青。新緑を思わせる緑。飽きることなく色は刻々と変化を続けていた。 「元々、観賞用の石として、採掘していたが、あまり売れなかったので、採掘しても割りが合わなくなり、鉱山は閉鎖されたのです」 「観賞用の石ですか?」  目まぐるしく変化する石の色。確かに、これなら見ていて飽きるということはない。永遠に美しい色彩を楽しめそうだった。 「売れると思ったのだが、誰も買ってくれないのです。もっと、刺激的な方が良かったらしく」 「すると、この鉱山にはまだ石が残っているということですか?」 「ああ。まだまだタップリある。どうせ、私達はこの星は破棄するつもりです。ご自由にお使いください」  グーム星人の話を聞いた二人は顔を見合わせた。  それは、思わぬ幸運であった。地球の人々が望むような地球上では発見されていない、その石は、まさしく、地球の生活を一変させるのには充分であった。石は地球に持ち帰っても、その特性を失うことなく健在していた。主に装飾品として人々の間で、珍重された。何せ、飽きることのない色の変化は楽しく誰もが喜んだ。  また、石の性質は装飾の分野だけではなく、科学の分野でも大きな成果を残した。留まることなく変化する、その性質は周りの風景に同化できないか研究が行われ、それが可能であることが分かると、瞬く間に兵器に転用された。姿を容易に隠すことができるのだ。各国が挙って、その石を欲しがった。
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