自分でも気付いていなかったから

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(そうだなー、失恋した美少年が、親友だと思ってた男に告白されて戸惑うってのは、どうかなー) 頭の中で流れを考えながら、キーボードを打つ。同性愛に偏見はないし、面白いことが好きだから、この仕事をしているときは、他のつまらない仕事をしている時よりも幸せを感じる。 自分でも所謂、天才ってやつだとは思っている。勉強は大体できるし、運動も悪くない。そこから好きなことは頑張るから、研究した分野もいくつかある。顔もスタイルも良い方だから、芸能関係の仕事だってやっている。一般人から見たら、恵まれているとさえ思うだろう。 でも、つまらなかった。何をしてもできてしまうってことほど、退屈なことはない。 だから俺は、何か暇つぶしができることを常に探していた。 そして見つけたのが、友達の恋。今は、親友の失恋。 小説の続きは、親友が再現してくれる。俺は静かに、パソコンを閉じた。 ________ 次の日、生徒会室に行くと、案の定紅葉の姿はなかった。 今日は年明け一週目の金曜日。風紀委員会と生徒会の合同会議の日だ。 「お、森谷。珍しいな、こんな早く来るなんて」 「ひどいっすよ桜川センパーイ。俺真面目なんですから」 「いやごめん、それは俺も信用できないわ」 「うわ、鈴木先輩まで!」 次期会長の桜川センパイと、次期風紀委員長の鈴木先輩。幼なじみの二人は、片方は無自覚で片方は世話焼きツンデレっていう中々いいキャラクターだ。もちろん、小説の方には反映させてもらってる。 「まあまあ、久しぶりに全員揃うんだし、あんまりいじめてやるなよ」 「いじめてねーよ。大体爽太が仕事仕事ってサボってばっかだったんだろ」 「だーから、サボってないって!あれは打ち上げ!」 「どうだか。女の子に囲まれてへらへらしてたじゃねえか」 最近ツンデレとチャラ男の恋路に発展がありそうな予感もするし、本当この学校はネタに尽きることがない。宮本先輩、ニヤニヤして愛情ダダ漏れなんで、ちょっとセーブしてくださいねー。 イチャイチャする二人を見て、桜川センパイがゴホンと咳払いをひとつしてから、資料片手に立ちあがった。 「今日は三年生は学年集会でいないから、初めて1、2年だけでの会議だな。 あれ?そういえば、香川くんは?森谷知ってるか?」 「さあ、俺今日一日会ってないんで」 そう。一日も欠かさなかった会議に、紅葉は来ていなかった。
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