651人が本棚に入れています
本棚に追加
「え?珍しいな、香川が欠席なんて。一郎、なんか連絡もらってないのか?」
「いや、俺のとこには何も」
「香川、桜川の近くにいたいからって、いつも一番早く生徒会室来てたのにな」
「なんかあったのかな?」
それぞれ紅葉のことを心配している先輩達。俺は会ってないけど、間違いなく、昨日の俺の発言が原因だとは分かっていた。
「あ、そういえば、紅葉。昨日、具合悪そうでした」
「本当か?ちょっと森谷、後で様子見てきてくれないか?」
「了解でーす。多分風邪で寝てるだけだと思いますよ。会議やっててください、俺見てくるんで」
「えっ、ちょ、森谷!?」
俺が直接悪いわけじゃないけど、このままにしておくのも面倒なことになりそうだし。桜川センパイの制止を振り切って、俺は紅葉の部屋に急いで向かった。
ピンポーン。
部屋のインターホンを鳴らしても、出ない。でも学校でも一度も見ていないので、寮の自室にいるのはほぼ間違いないはず。
っつーか、同室のヤツはどこ行ったんだよ。使えねえな。
「おい、お前なんか用か?」
「あ?」
声のする方へ顔を向けると、そこには坊主頭の背の高い男が立っていた。野球部とかにいそうな体格だけど、手にはバスケットボールを抱えている。なんだ、ただの桜木花道か。
「そこ、俺の部屋なんだが。それとも、香川に用か?」
「そう、俺生徒会の森谷。紅葉いるか?」
「…ああ、どこかで見たと思ったら、Q組のヤツか。香川なら、朝からずっと寝てるぞ。
具合悪いらしいから、用なら手短に済ませてやれよ」
そう言うと、その坊主頭の男はドアを開けて、またどこかへ行ってしまった。あれ、何しに来たんだあいつ?と思いながら、紅葉(と坊主頭)の部屋に入る。
玄関は真っ暗で、共有リビングの先の廊下だけが、うっすらと明かりをともしていた。
最初のコメントを投稿しよう!