聖なる夜に口付けを

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正宗や鈴木くんなど、事情を知ってる奴らに簡単にメールを送っておいた。 一応黙って抜けてるから、フォローしておいてもらおうと思ってね。 さ、やることは終わらせたし、後は一郎とデートするだけだ。 「一郎、お待たせ。もうすぐ着くよ」 「先輩…じゃなかった、由貴、さん。 いいんですか?タクシーで移動なんて、なんか気遣わせちゃって」 「気なんか遣ってないよ。大事な恋人を寒空の下移動させて、風邪引かせたくないだけ。さ、降りよう」 「は、はい」 まだまだ呼び方がぎこちない一郎に、思わず顔が緩んでしまう。だって俺の言うことにもいちいち照れるし、普段結構男らしいのにたまに見せる可愛い仕草がたまらない。おっと、今は惚気てる場合じゃないな。 運転手にお金を払い、タクシーから降りる。着いた先は、繁華街から少しだけ離れた某有名ホテル。 隣では愛しい恋人が、あっけに取られてホテルを見つめている。口開いてるのも、アホみたいで可愛い。 「ここって、…めちゃめちゃ高いとこじゃないですか!え、え、俺そんなに持ち合わせないですよ?」 「大丈夫、一郎にお金なんて払わせないよ。今夜は俺に奢らせて」 「でも、悪いですよ。さすがに気にします」 「ここ、親戚が経営してるところだから、タダみたいなもんだし。早く行こう」 「由貴さんちって、もしかしてお金持ちなんですか…?」 「さあ、どうだろうね」 頭に?を浮かべている一郎の手を取り、ホテルの中へと進んでいく。ここのレストランは父方の叔父が経営しているので、家族でもよく来ているし味も雰囲気も最高だと思う。だからこそ、クリスマスイブのディナーに選んだのだけど。 ホテルのエントランスを進んでエレベーターに乗り込み、最上階に向かう。扉が開いて目の前には、ガラス張りの通路が。 右手にあるのがレストランだ。予約の時間5分前、すでに支配人が入り口で待ってくれていた。 「いらっしゃいませ、舞浜様。どうぞ」 「ああ、ありがとう」 一郎はおどおどしてるかと思ったけど、さすが政治家の長男。一度中へ入ってしまえば、それなりにしゃきっとしている。手ちょっと震えてるけど。
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