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ケーキを食べ終えて片付けてもらい、部屋でテレビを見ながらまったりと過ごしていた。時刻は午後10時。今頃学校の奴らもパーティーが終わって、二次会とかで騒いでいるんだろうかと思っていたら、隣で盛大なあくびが聞こえた。
「あ、すいません…」
「いや、いいよ。俺もちょっと眠たくなってきたし。風呂入って寝ようか」
「えっと、寝るって…もしかしてここですか?」
「そうだよ?」
俯く一郎に最初は訳が分からなかったけど、顔を赤くしているのに気付いた時点でピンときた。
「一郎。もしかして、緊張してる?」
「あ、当たり前ですよ…二人きりなだけでも恥ずかしいのに、一緒の部屋で寝るだなんて…」
両手で顔を隠す姿に一瞬悪魔が囁きかけたが、そこをグッと抑えて笑顔を作る。
「大丈夫だよ。何もしないし、ただ隣で寝るだけだから」
「な、にもしないって、何するつもりだったんですか…っ」
「いやー、そりゃあ男だから、恋人と同じ部屋で寝るなんて、色々下心も働くけど。
俺は一郎が大事だし、大切にしていきたいから。……まだ、今日は何もしないよ。安心して」
「う…はい」
「じゃ、先にシャワー使っていいよ。俺、ちょっとトイレ行ってくるから」
「分かりました。…ありがとうございます」
一郎がバスルームに入っていくのを確認してから、ソファに体を倒してふうっと溜め息をついた。あんな顔されたら、襲いたくなるだろうが…まったく、必死で紳士ぶるこっちの身にもなってくれよと一人脳内で愚痴る。
(両思いになれただけでも幸せなのに、俺って欲張りだな)
想いが通じ合ったら、次は相手のすべてが欲しくなってしまう。男としては当たり前の感情なんだろうけど、欲望のままに突っ走ってはいけない。まして愛しい相手なら、なおさら大事にしないと。心と体の葛藤は、一郎が出てくる15分後まで続いた。
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