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「じゃあね、海治」 「送らなくて…」 「いい」 海治が送るというセリフに被せてあたしは断りの返事をした。 海治の家に留まる事はしない。 自分の家じゃないと 落ち着いて眠れない。 帰巣本能が働いて 他人の住み処じゃ寝首の心配をしなくちゃいけないくらいに 落ち着かない。 「咲良」 「バイバイ」 何か言いたかったのかもしれない。 海治の方を振り返りもせずにエレベーターへと足を運んだ。 「はぁ」 いつも いつも、空の気持ちだけが残っていて。 なんにもやる気が起きなくなる。 ダルさ 虚しさ 儚さ。 あたしの中身はどこにあるんだろう。 きっと触れ合う相手を変えても同じ。 いつもと同じ。 空っぽの身体を重ねるだけじゃ 駄目なんだ。 だけど、あたしの中身は もう何処かに抜け落ちてしまっているらしく 何処を探しても 新たに何かを入れようとしても 無駄らしい。 「何が足りないのかなぁ」 帰り道 夜空を見上げて 月に祈る。 空虚なあたしに光の加護を。
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