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「天狗の宴会にはもう懲りたよ。僕は自分のペースで呑みたい」
「たまには大勢で呑むのもいいじゃないですかー、それに……ん?」
「どうかしたかい?」
ふと顔を上げた文に霖之助が疑問を投げ掛ける。
「あやや……すみません店主さん、不穏な風を察知したので今日はこれにて撤退させて頂きます、それでは」
「あ、おい――」
止める間もなく、彼女は勝手に店の裏口から出て行ってしまった。
扉の閉められる音を呆然と聞き、霖之助はどうしてウチの常連はこんな奴等ばかりなんだと一人嘆く。
「……やれやれ」
妖怪の山で宴会。彼女には悪いが天狗に囲まれて宴会なんて真っ平御免である。そもそも店を空けて宴会など――
――カラン、カラン。
そう思って間もなく、今度は正面の玄関から来客者が訪れた。
今回はちゃんとした客でありますように。そう願い、霖之助は来客者に声を掛けた。
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