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「交通事故についてどう思いますか?」
画面の中にいるタレントが真剣な顔つきで一般庶民にインタビューをしていた。
画面の左上には「無くならない交通事故」というテロップが置かれている。
インタビューを受けた年配の男性は「皆信号無視、又はスピード違反等いけないと分かっている筈なのに、心の隙をついて起こる全く無くならない公害の一つでしょうかね」と眉を顰めた。
「人が群れて今にも溢れ出しそうなこの世界の中、いくつかの規則を設けなければ何も成り立つ筈もない。しかし守る人がいなければ意味等ある訳がない」
若干カメラを意識しながらも、声のトーンを落として続ける。
「政府にはもう一度見直して頂きたいものですね」
相槌を打っていたタレントがマイクを自分の口元に戻してから「どうもありがとうございました」と締めくくった。
テレビの映像がスタジオの風景に切り替わる。しんみりとした空気の中、1人の女の人が切り出した。
「ありがとうございました。えー、此方をご覧下さい。今年起こった交通事故数ですが――」
見続けれなくなって、テレビを消した。音が途絶えた部屋に、無邪気に踊る兄の声が飛んでくる。
「しょーへー! パジャマー!」
「・・・はいはい」
腰をあげ椅子から尻を離す。
声の発信地である2階に続く階段を上った。
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