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黄一郎(苦っ)
スティックシュガーを手に取る黄一郎。チラリと赤音のギターケースに目をやる。
黄一郎「今『音楽には詳しくない』って言いましたけど、先輩は軽音部なんですよね?」
赤音「ああ。そのことなんだが、キミにまだきちんと説明していないことがあってな」
クリームソーダのストローを弄びながら赤音は話す。
赤音「実は、軽音部ではないのだ」
黄一郎「……え?」
驚きで固まってしまい、スティックシュガーが全てコーヒーに入る。
机をバンと叩き立ち上がる黄一郎。
黄一郎「ちょっ、それってどういうことですか!?」
赤音「私が入学した時、軽音部は部員0で廃部寸前だったのだ。ちょうど別のことをするのに部室が欲しかったので、私は軽音部に入部したというわけだ」
黄一郎「……つまり、軽音部では音楽活動を一切やっていないと?」
赤音「そういうことだ」
黄一郎が焦り顔で赤音のギターケースを指差す。
黄一郎「なら、アレの中身は何なんですか!?」
赤音「勿論ギターではない別の物が入っている」
がっくりと項垂れる黄一郎。
赤音「そういうわけなのだ。すまないな」
黄一郎「そういうことならまぁ……納得です」
赤音「お詫びといっては何だが、ここの代金は私が持とう。少し席を外すぞ」
立ち上がりお手洗いへと消えていく赤音。
黄一郎の目が、赤音のギターケースを捉えた。
黄一郎(ギターが入っていないなら、一体何が入っているんだ?)
そっと席を移り、赤音のギターケースに近付く。ケースには『ラブリーくまちゃんズ』というロゴの入った可愛らしいステッカーが貼ってある。
赤音がまだお手洗いから出てきていないのを確認してから、黄一郎はギターケースに手をかける。
黄一郎(すみません先輩!)
ギターケースを開く。
黄一郎「……な、何だコレ?」
中には、鉄パイプの持ち手が付いた『一時停止』の道路標識が入っていた。
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