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黄一郎(うわっ、近っ!)
二子「話してみてくださいミスター」
黄一郎「あ、ええと、何て言うんだろうな。つい最近までやってた小さい店がある日突然貸店舗になってて、いざそうなってみると今までそこに何の店が入っていたのか全く思い出せない。そういう経験ってない?」
二子「言いたいことはわかります。残念ながら、私では力になれそうにもないですね」
踵を返し、鞄を手に教室を出て行く二子。去り際に振り返る。
二子「まあ、世の中には知らないままの方がいいことも沢山ありますよ。そのことをお忘れなく、ミスター黄一郎」
二子を見送り、黄一郎は尚も考える。
黄一郎(あそこにあった標識が何だったのかなんて、こんなに悩むほどの問題でもないはずだよな)
空を見る。
黄一郎(でも、何だろう。その先に大切なことがある気がする……)
ハッとなる黄一郎。時刻はすでに放課後を迎えており、教室にいるのは自分一人であった。
黄一郎「やっべ! 急がねーと!」
鞄を取りギターケースを背負い、黄一郎は教室から飛び出した。
○部室棟(夕)
軽音部部室前で息を整える黄一郎。
黄一郎(部活紹介とかもまだなのに来ちゃったけど、よかったのかな?)
ニッと笑う。
黄一郎(いいよな。俺は軽音部に入るって決めてるんだから!)
ギターケースを背負い直し、意を決して部室の扉を開ける。
黄一郎「こんにちは!」
扉の先には、拳を引いているリーゼントの男・鷹嘴青國。
青國「さようなラアッ!」
青國の拳が黄一郎の頬を捉える。
吹っ飛んだ黄一郎は、わけもわからぬまま気を失った。
○軽音部部室(夕)
黄一郎「うぅ……ん?」
目を覚ました黄一郎の視界に、寿々木赤音の顔が飛び込んでくる。
赤音「気が付いたか。キミは見た目より丈夫なようだな」
黄一郎「あれ? ここは……っ!」
自分が赤音に膝枕をしている状態であることを理解し、飛び跳ねる黄一郎。
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