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赤音「急に動かない方がいい」
と、膝枕の状態で押さえつけられてしまう。
思わぬ幸運にニタニタしている黄一郎。
血の涙を流しながら黄一郎を睨む青國。一気に黄一郎の顔から血の気が引く。
黄一郎「もっ、もう大丈夫ですから!」
赤音「むっ、そうか?」
黄一郎が立ち上がり、赤音も腰を上げる。
向かい合う形となる二人。
赤音「私の連れが暴力を振るったようで申し訳ない」
黄一郎「あ、いえ……」(思ったより小柄な人だな)
赤音「私は三年の寿々木赤音だ」
黄一郎「俺は紗刀黄一郎っていいます。一年です」
赤音「うむ、いい名だな。あのリーゼントは鷹嘴青國。二年だ。青國、まずは彼に謝れ」
青國「ケッ」
そっぽを向く青國。赤音が鋭い眼力で睨みつける。
赤音「聞こえなかったか? 謝れと言ったのだ」
青國「ひいっ! ……わ、悪かったよ」
黄一郎(赤音先輩って、一体何者なんだろう……)
苦笑いを浮かべる黄一郎。その目が部室の隅に立てかけてあるギターケースと捉えと、ハッとなり駆け出した。
急いでケースを開ける黄一郎を、赤音と青國は少し驚いた様子で眺めている。
アコースティックギターを取り出した黄一郎は、壊れていないか入念に確かめる。
黄一郎「……よかった。壊れてない」
安堵する黄一郎。
赤音「それはそんなに大事なギターなのか?」
黄一郎「はい。父さんの形見なんですよ。まだ俺が小さい時に交通事故で……でも、俺一緒にその車に乗ってたのに、当時のこと全然思い出せないんですよね」
誤魔化すように笑う黄一郎。しかし、部室には暗い空気が漂う。
黄一郎(まずいな。余計な話をしてしまった……ん?)
他のギターケースが目に止まり、黄一郎は本来の目的を思い出す。
黄一郎「あっ! 俺、軽音部に入りたいんですよ! よろしくお願いします!」
頭を下げ、笑顔で返事を待つ。
黄一郎(青國先輩は怖いし入部拒否られたけど、赤音先輩は優しいし美人だし、許可してくれるはず!)
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