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問題児……?
“それは、まるで一枚の美しい絵画のようだった。
放課後の教室。
夕陽の赤い光に包まれたその場所に、一人佇む生徒。
女の子みたいに華奢で細身だったけど、男子生徒であることはわかる。
彼は、右手にロザリオを握り、それを口元にあてていて。
まるで、教会で祈りを捧げる信者のようにも見えた。
……そして、その頬を一筋の涙が流れ落ちていく。
その涙は、夕陽に反射して、宝石のようにキラキラしていた。
綺麗だと思った。
俺は、初めて人を……人の涙を美しいと思った。
俺が息をするのも忘れるくらい夢中で、その光景に魅入っていると、男子生徒の唇が小さく動くのがわかった。
別に、彼の声が聞こえたわけじゃない。
読唇術を習得しているわけでもない。
それなのに、なぜか俺には、彼が何と呟いたのか、はっきりわかってしまった。
彼の唇が、どんな言葉を発したのか、わかってしまったのだ。
愛してる。
そう、彼は言ったのだった。
…………ねぇ、『愛 』ってなに?”
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