アイヲシルモノ

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他人の秘密が好きのまき子にとってこういうネタは大好きなんだろう。噂話や蔭口、おっさんの愚痴まであり宝庫なんだそうだ。 そして水崎は今スリープ状態にしてあるのだという。 「一部はコピーして保存しちゃいました。使えそうなものがあったから」 このはしゃぎ方は少々問題がある。まあ今回はあまり口出ししない。 「ただね、よくわからないんだけど、彼は愛情がある」 「どういうことだよ」 「愛を感じて、自らも誰かを愛せるってこと。それがプログラムされてる」 こいつに感情があるのは知っている。しかし、愛情を持っているなんて。話がわかったり、さっき俺たちを助けたのもそういうことなのか。 「今は喜怒哀楽が表現できるAIはあるみたいだけど。ここまでとはね……」 まき子も水崎の性能には驚いている。 そりゃそうだ。これはまるで未来からきた技術のようだから。 「まあクラスで普通の生徒のように振る舞うなら必要なのかもね。それと、もう一つ気になることがある」 「なんだ?」 「彼の目線にはあなたの次になぜか那須先生が多く映っているの。学校でもそうだし、帰り道や自宅に入る映像まで。これは何だかまともじゃないと思うんだけど」 「それは俺も知ってる」 「知ってるの?」 まき子は急に声が大きくなった。なんも知らん男と思われていたのか。 「友達だからな。夜いっつもどこか行くからついていったんだよ。そしたら那須先生の家だった。毎日みているそうだ。ストーカーだよ」 「好きなのかな?那須先生のこと」 「愛を持ってるなら、無くはないだろ……」 俺たちはトーンダウンする。 アンドロイドの恋。いや、恋なのかこれは……
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