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15.
18時を過ぎて、いつものように水崎は那須先生のもとへ行きたがったので、俺は同行することにした。
今度は物陰から覗かずにきちんと話すために。
タクシー代はまき子に借金した。情けない。これ以上借りも作りたくはなかったんだけど……貧乏はつらいな。でも感謝している。
「おい、隠れるなよ」
水崎はこの間のように蔭にいる。
「今日は会いに来たんだからな。偵察じゃねーぞ」
水崎は冷たい目でこっちを見る。アイツにとってはいつもの”ミッション”なのだろう。
「俺はここにいるぞ」
好きな人に会うのが恥ずかしいのか。うぶすぎるだろ。アンドロイドが。
「好きにしろ。あと俺は先生に危害加えないからな。そこでおとなしくしてろ」
「わかってる」
なので一人で会うことになった。まあその方が都合がいい。
そこで待つこと20分、買い物袋を下げて那須先生がゆっくりと歩いてくるのが見えた。
杖をつきながら大変そうに進む姿に耐えられず、俺は駆け寄る。
「先生、持ちましょうか?」
先生は突如声をかけられワっと小さく声を上げたが、すぐ安心した表情にになった。
「東野くん!何してるのこんなところで」
「先生にお話がありまして。荷物持ちますよ」
「いいよ。全然平気だから」
先生はやや突き放すように断った。この手の同情は嫌なのかもしれない。
「それより話って何?」
「水崎についてなんですが……」
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