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16.
「いらっしゃい」
一階とはいえ階段を五段程上った左側に102号室はある。その扉を3回、少しおいて2回、そしてまた3回。
このノックをするとまき子は重い扉を開けてくれる。とりあえずチェーンはついたままだが。
「で、何なんだよ。期待していいんだな?今手掛かりが何もないから大変で…」
「まあ上がって」
そのつもりだが、何も言葉を遮ってまで言わなくてもいいじゃないか。
相変わらずの暗い部屋。まき子はパソコンに向かい、俺は少し後ろから椅子に座って何となく見ている。
「今日はほんのり化粧してるな」
「午前中学校行ったもん。サボり魔のあなたとは違うのよ」
「よく言うよ」
「でも大事な情報が入ったから早退してきたんでしょ。留年したらマサキのせいだから」
割りとテンション低めでのその言葉は良心に響いた。
何もそこまで言わなくてもいいじゃないかと自分をかばいたくなる。
「まあでも最近その安田って奴の仲間が死んでめちゃくちゃよね」
「ああ、もう大変なんだ」
「だからあたしも色々気になって調べたの」
「今安田たちを狙い、殺しているのは西崎だ。彼女の父親さ。奴らの死が続いたのは彼が姿を消してから。それに人を殺す能力を持った彼なら悲惨な事故を作り出す事もできる」
「人を殺す能力?」
まき子も思わず聞き返す。
そりゃこんな話題を振られて飲み込める方がおかしい。
「本人が言ってた。特定の相手の目の前に現れたら意のままに相手を殺せると」
「まさか信じてるの?」
「でもこの事件が起きてから少しは信じるようになった」
そうでなければ誰があんな事故を作り上げられるんだ。
「だったらこれも?」
まき子はモニターを切り換えた。踏み切りの事故現場を撮影した写真が表示される。
「狭川市南野町の踏み切りで男性が走行中の電車に跳ねられた。それも上り下り両方の電車に」
「なっ…」
「警察もまだ公式発表してないんだけど、今日午前11時52分頃、男が線路に寝そべってたらしいんだけど、下り電車に足を轢かれてその後苦しみ悶えていたところ上り電車が激突。身元は現場に落ちてた財布から、名前は大林武志とわかった」
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