悪魔になった男

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「あった。今は高速乗ってる。湾岸線。今から20分程で大山出口で降りると思うから急げば捕まえられるかも」 「車種わかる?」 「それはTwitterに写真があった。黒のレクサス。栄井ナンバー・は・23-08」 「ありがとう!助かるよ」 俺はまき子の力に改めて感動した。 こんな至れり尽くせりな事あるか?自分の足だとその労力は計り知れない 「それじゃあ今回の情報料プラス作業料なんですが」 まき子はそう切り出すと俺の感動とは裏腹にパソコンのモニターがパッと変わった。 焼き肉の写真だ。どこかのホームページみたいだろう。 「あたし前から食神堂にチョー行きたかったの。すごくおいしいらしいじゃない!いやぁ楽しみ!」 食神堂はかなりの高級焼き肉店だ。そりゃあ旨いらしいが、何せ上ハラミ一人前3500円もする。常識的に考えて高校生が2人で行く店じゃない。 どれ程学校での頼まれ事をこなさないといけないのか… 俺は冷や汗が出た。 「わ、わかった。また日取りを決めよう」 「毎度ありがとうございます。またいつでもご用命を」 急にビジネスライクになる。そりゃそうなんだ、デートじゃないんだから。 そこら辺のケジメはお互いついてる。 「ホントにありがとう。じゃあちょっと戦ってくるわ」 「うん、死なない程度にがんばって。死んだら食神堂が無くなっちゃうし」 後半が少し気になったが、まき子のお決まりのセリフを聞くと俺は急いでアパートを出て健ちゃんに電話した。 『どうした?』 健ちゃんはすんなりと出た。この時間帯ならシャワーも浴びて、リラックスしている頃だろう。 「今から健ちゃんの部屋に向かうから一緒に来てほしいんだ!」 『どこに?』 「喜多屋の馬鹿息子に会いに行く」 『喜多屋?喜多屋のお醤油か?』 充分に説明している暇が無い為、健ちゃんはうまく飲み込めないでいる。 「そうだよ。それが夏美さんの事件に大きく関わるんだ。下手すればまた人が死ぬ。だから頼むよ」 必死な反面、面倒な事に巻き込んで申し訳ない気持ちもあった。 『わかった。じゃあ準備しとくから来い』 健ちゃんは詳しい事は聞かずに付き合ってくれた。 やっぱり最高の兄貴だ。 「助かるよありがとう!すぐ行くよ」 もたもたしていられない。早く馬鹿息子に会わないと… 俺は電話を切り、急いで自転車を走らせて健ちゃんのアパートへ向かった。
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