悪魔になった男

41/49
前へ
/126ページ
次へ
17. ものすごい向かい風を受けながら俺は喜多屋の馬鹿息子に合流する為、健ちゃんのバイクの後ろに跨がっていた。 時速80キロというのは車ではそんなに迫力を感じないが、バイクだとまるで200キロ位で走っている気分になる。 5分もしないうちに湾岸高速大山出口付近まで来た。 側には夏美さんが事件に遭った大山公園、そして道路挟んだ向かいには入江がありクルーザーがいくつか停船している。 「ホントに大山出口辺りで待てばいいんだろうな?」 「ああ、今は降りたか降りる頃じゃないかな」 風音とエンジン音で聞き取りづらい。 けど、疎通は出来る。 「栄井ナンバーの黒のレクサスだから健ちゃんもちょっと注意してて」 「オッケー。あんまレクサスとかこの辺じゃ走んないしわかりやすいな」 もう高速を降りたのか?過ぎ去ってたら見つけようがない。 まき子にGPSを転送してもらうか… そう思い携帯を取り出した。その時健ちゃんが、おいと俺の肩を叩いた。 反射的に前を向くと、速い速度で眼前を黒のレクサスが通り過ぎた。 信号も青のままでレクサスは走り続け、遠くなるナンバーを確認した。 栄井ナンバー、は・23-08…あれだ! 「健ちゃんあれだ。追って!」 健ちゃんは冷静に頷いた。がスロットルは思いきり捻り、ここに残像が残るんじゃないかと思う程のスピードでバイクは走りだした。 かなり速いスピード、俺は振り落とされるんじゃないかと真剣に考えた。 視界が狭くなる。ヘルメットのせいだけじゃない。しかしレクサスははっきりと捉えられていた。 追い付いたところでどうやって止めよう… それは悩んだが、あっという間にバイクはレクサスを抜き去った。 「今は車も少ないからちょっと無茶するぞ」 「えっ?」 俺は健ちゃんの言葉にしっかり返事をする間もなく、次の瞬間にはバイクが急角度をつけて曲がった。 遠心力で振り落とされないように必死で捕まるものを探した。かなり慌てたが結局健ちゃんのジャケットを強く握った。 そして、キキッという甲高いブレーキ音を上げて道路に対し横向きになり一車線分たっぷりに幅を取ってバイクは止まった。 死ぬかと思った…いくらなんでもこんな無茶苦茶な事しなくても。 「びびった…ほんと勘弁してよ」 しかし安堵するのは早かった。 行く手を塞がれたレクサスはそのままバイクに向かって来ている。 「わああああああ!」
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加