悪魔になった男

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俺は全力で叫ぶ。だがレクサスは急ブレーキを踏み、なんとかバイクの30センチ手前で止まった。 「ほら簡単に止まってくれるだろ?」 「健ちゃん、俺まだ死にたくねえよ」 心臓がバクバク鳴っている中、俺たちはバイクを降りた。 「何してんだ!頭おかしいんじゃねーのか?」 馬鹿息子が窓から身体を乗り出して怒りを露にするが、俺はできるだけ冷静に馬鹿息子に話しかけた。 「おい、西崎って親父知ってるよな?」 「…知らねえよ」 馬鹿息子が明らかに視線を反らした事で俺の考えは確信に変わった。 「この後どうせ暇だろ?俺らとドライブしようぜ」 「…ああ、わかったよ」 俺に胸ぐらを捕まれた馬鹿息子は堪忍したように渋々車に招き入れた。 バイクを移動させた後、車を再出発させ西崎の居場所について問い質した。 「西崎さんはどこにいるんだ?」 「知らねえよ」 馬鹿息子のふてぶてしい態度に俺は思わず奴の頭を窓に叩きつけた。 「いい加減にしろよ!お前のせいで何人死んだと思ってんだ!」 熱くなっている。喧嘩もほとんどした事のない俺がいつになく。 「おいやめとけ!こいつが運転できねえだろ!」 健ちゃんが俺の肩を殴って止めた。 その痛みで俺は止めざるを得なかった。 「言えよ、頼む…」 「じゃあ教えてやる。あの親父は安田を追っかけて奴の女のアパートに行ってるよ」 「それどこだよ?」 健ちゃんが突っ込むが、さぁねといった表情でとぼけて見せた。 「大丈夫、俺知ってるから」 その言葉に馬鹿息子は動揺し始めた。 「長谷川勇斗にアパートの住所教えてもらったんだ。ナビに入れて行こう」 「長谷川って誰?」 わからない展開なのか、馬鹿息子は怪訝な表情になる。 「安田の昔の仲間だ。もう縁は切れてるけど今回の事件でみんなひびってた。真面目に再出発してるのに」 「無理無理。どうせ平気で人を傷つけてきた奴はいつまでも変わんねーの。わかる?」 半分は全うな意見だと思うが、今は聞きたくない。こんな奴の言葉なら尚更だ。 俺は拳を握ったが、耐えた。 「でもさぁ、君たちもおかしいよね?他人の親父の事心配しちゃってさ。ほんとバカみたいだよ。もう間に合わないかもしれないよ?あの親父には教えてあるしそれに…」 馬鹿息子はまたまたムカつく言い方で俺らの神経を逆撫でしてきたが、今度は俺よりも先に素晴らしいスピードで健ちゃんが顔面を殴っていた。
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