40人が本棚に入れています
本棚に追加
「西崎さん、あんたが今までの4人も殺したのか?」
あまり信じたくなかった。だから会ったら始めにどうしてもこれを聞きたかった。
「そうだよ。こいつらは夏美を辱しめたんだ。ただの己の欲求の為に。もう堪えられなかったよ…夏美は何もしちゃいない、ただの何一つも。復讐に燃えていた時、事件を見たというそこの彼にこいつらの名前や居場所を教えてもらってね」
俺は馬鹿息子を睨んだ。
「だからこいつらを殺した。東野君、出ていってくれないか。君たちまで殺したくないんだ」
その言葉に俺はショックを受けた。
手は出しちゃいけないと自制しながらも、下手をすれば俺も殺し兼ねないという事なのだ。
本当に西崎の中では人を殺すためらいは消え去っている…
今や誰も止められないんじゃないかと強く感じ始めた。
「お、お前ら知り合いか?だったら助けてくれよ!この親父やべえんだよお願いだ…」
安田は必死に懇願する。
俺は奴に少しだけ同情した。ほんの少しだけ。
「あの夜、お前ら仲間は5人で大山公園を通って帰る途中の若い女を襲った。そうだな?」
「いや違う!俺たちは大山公園なんて何年も行ってない!」
「西崎さん違うんだ。安田たちは確かに最低だけど、夏美さんは襲っちゃいない」
「どういう事だ?」
「こいつが安田たちを快く思わなかったから、復讐に燃える西崎さんを利用して葬ったんだ。この男の自己都合に西崎さんも安田も巻き込まれただけなんだよ」
「君の言ってる意味がわからない」
西崎はまだ飲み込めないようだ。
無理もないが、安田を殺すのだけは阻止したかった。
「だから安田は関係ないんだ。もう止めてくれないか?」
まさか今はこんな説得が通用するとはあまり思っちゃいない。
しかし他に気の利いた言葉が見つからなかった。
「ウフッ、ハハッ…ワアーッハッハ!ヒヒィーッ」
馬鹿息子が突然張りつめた空気を破るように笑いだした。
なんだこいつ…
健ちゃんの方を見ると同じように状況に困惑し、引いていた。
その直後、馬鹿息子は近かった俺の首を取り、ナイフを突きつけた。
「おい親父!このガキ殺されたくなかったら安田殺せ」
最初のコメントを投稿しよう!