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「今も同じ小学校にお勤めで?」
「いえ、今は転勤しました。もう何年前になるかなぁ」
確かに先生はある時突然小学校を去った。俺はもう中学生だったが、母校の恩師なのだからすぐに耳に入っても良さそうだが、俺が聞いたのはずっと後だった。
「でも先生急にいなくなるんだもん。びっくりしたよ」
「それは仕方ないだろ。公立の先生なんて転勤が全てなんだから」
「そうだけどさ、それでも突然だったし…」
「はい、カレーお待ちどうさまです」
フェイドアウトしそうな俺の声を完全にカレーの登場で消した。
いや、それでいい。
「美味しそうじゃないか!東野はいいなこんなご飯ばっか食ってんだろ?」
「いや、晩ごはんは大体俺らでやってるからそうでもないよ」
俺の話を聞いてるのか今一定かではない中で先生はカレーを食べ始めていた。
「旨いよ。これは旨い!俺が食ったカレー史上ナンバーワンだな!」
「そこまで美味しそうに食べてくれたら嬉しいよ」
「いやぁ、いい店教えてくれたなぁ!ってお前の店か?ガハハッ」
カレー食べただけでこの上機嫌はなんだ?子どもかよ、と思ったが昔から調子の良い先生だっから多少疑問を持ったりしながらも何でも許せた。
「あっ、じゃあ俺もカレーください。先生が旨そうに食うから食いたくなっちゃった」
健ちゃんが雑誌を畳んで言った。
先生の持ち前の明るさは多くの影響力を含んでいる。
「おお、お前も食いたくなったか!いやぁ旨いぞこれは」
「そりゃよかった」
その後、なぜか俺とサーシャも加わりカレーを揃って食べた。
やっぱり先生がいるだけでもう先生の空気になる。その人柄は変わってなくてとても嬉しかった。
ただ、左利きのはずの先生が何故かスプーンを右手で使っていたことが俺は強烈に気になったけれど。
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