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そんな事があったのか…
俺は全く知らなかった。やっぱり中山可奈は俺が思った通りの良い娘で嬉しかった。
「一人でって、友達いないのかよ」
健ちゃんは言ったが心無い言葉は無視する事にした。
その時、俺の携帯電話が鳴った。
相手はまた貴さんだ。
「もしもし、どうしたの?」
『おいマサキ、お前家に帰ったか?』
やけに念を押すような言い方だ。
「帰ったよ。これでいいんでしょ?」
『ああ、それなら良いんだ。例の死刑囚だがな、一時間ちょっと前にお前の店の近くで目撃情報が入ったんだ。お前の事だからまた道草食って帰らねぇでいたらどうしようかと思ってたんだ 』
死刑囚の話より俺は貴さんにあんまり信用されてないってわかった方がショックが大きかった。
日頃の行いのせいだろうな。
「でも大丈夫だよ。今はお客さんもいないし外には誰も出ないはずだから」
『そうしてくれ。怪しい奴が来たらすぐに連絡くれ。逃げれるんなら逃げろ』
「わかった」
俺は電話を切ると、死刑囚の話を先生にも伝えないといけないと思った。
先生を危険な目に遭わせる訳にはいかなかった。
「なあ先生、いつ頃帰るの?」
「なんだよ、俺に帰って欲しいのか?」
「今さ、この辺りに脱走した死刑囚が潜伏してるらしいんだ。だから今は帰るのは危険だと思って。明日も仕事だろうから動かなきゃいけないとは思うけど」
先生は俺の話を聞き終わると、何故か優しい表情を見せた。
「ありがとう東野。まあその時は駅までタクシー乗ったら安全に帰れるから。気にするなよ」
「わかりました」
「マジかよ死刑囚か、恐え世の中だなぁ」
言葉とは裏腹に健ちゃんの言葉には全く感心が無さそうだった。
「健ちゃんも気をつけてくれ。もうすぐ店に行くんだろ?」
「大丈夫だよ。急いで行って店に引きこもってるから」
笑いながら言う健ちゃんは何だか安心出来る。この人に限っては本当に大丈夫そうだから不思議だ。
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