死刑囚

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「じゃあもう行くわ。先生、またうちの店にも寄ってよ」 健ちゃんはそう言うと先生に<Bar Sullivan>の名刺を渡して〈ベルナール〉を出た。 「先生はまだいるでしょ?」 「長居は迷惑だろ?」 「そんな事ないって。まあ先生はゆっくりしていってよ」 「そうか?悪いなぁ」 そんな時また俺の電話が鳴った。今日は良く電話がかかってくる。 表示の相手は伊丹矢一、中学時代に長崎へ転校してしまった同級生だ。 「どうした突然?」 『いやぁ、今度のゴールデン・ウィークにそっち帰るからさぁ。遊べないかと思ってさ』 今日は何だか懐かしさに花が咲く。不思議な日だ。 「おう来いよ!全然空けとくから」 『ありがとう!柏木先輩と未だにつるんでんだって?』 「でも健ちゃんはもう丸くなったよ。今は立派に働いてるし」 半分は嘘かもしれないと思ったが黙っていた。 『そうか、柏木先輩にも会いたいな』 「会え会え。いっぱい遊ぼうぜ」 ここで俺は中山可奈について矢一にも訊いてみる事にした。俺が正しいのか健ちゃんが正しいのか。 「そういやさ、中山可奈って覚えてる?5年の時に一緒のクラスだった」 『覚えてるよ。地味な子だろ?』 どんな印象だったって訊く前に言われた。 「地味ってそれだけか?可愛いとか可愛らしいとか女の子らしい子だとかあるだろ」 『何であんな地味にブスな娘好きなんだよ?』 「何で好きってわかったんだよ」 『誘導尋問が酷すぎるからだよ。まあ好きになるのはそれぞれだからな』 「女の子らしい一面だってあったんだぜ。上林先生が寝込んだ時は千羽鶴折ったりとか……」 『それはないな、ウソっぱちだ』 「何でだよ」 俺は断言する矢一に苛立った。
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