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4.
俺は自室で急いで古藤まき子に電話をかけた。
相変わらずのダイヤル音も聞こえるかどうかの早いスピードで出る。
こういう時は作業中にパソコンで電話に出ているらしい。どんなシステムなのか以前に説明されたが全くわからなかった。
『どうしたの?』
「緊急だ。今すぐ調べてくれ」
『何でそんな小声なの?』
もしかしたら先生に聞かれていると思うと俺は自然と小声になっていた。
「慶章小学校で教師をしていた上林輝男って男を調べてほしい」
『手がかりはそれだけ?』
「年は確か52で、今は末原に住んでるらしい」
『それ手がかりっていうの?』
「頼む!今日言ってたアレ使うわ」
電話の向こう側でため息が聞こえた。
『その上タダ?まあ言っちゃったししゃーない。明日の朝まで待ってくれたら……』
「いや、精々一時間かそこらでどこまでわかる?」
『一時間!?あんた何考えてんの?それで何もかもわかったら探偵とか必要ないし』
まき子がそう言いたくなるのもわかる。しかし今は奴の正体を突き止めるのが先決だった。
「頼む!全部じゃなくていいから。わかる限りでいい。急に悪いな」
『ほんとにそれ、客はあんただけじゃないんだから。まあいいわ、ちょっとやってみる。プロフィールが関の山じゃないかな』
「恩に着るよ」
するとまき子は返事したのかわからない程の声を出して電話を切った。
あとは情報が上がるまでの間、こっちはこっちで上林先生の正体を探る事にした。
「先生、そういえば覚えてます?」
「何を?」
先生という呼び方に突然違和感を覚えだしたが、先生を通すしかなかった。
「音楽の山口先生が演奏会で先生にめちゃめちゃ怒って泣き出した時とかも先生はこっち見て笑い堪えたりしててあん時とかは死ぬほど笑ったんですけど覚えてます?」
先生は一瞬考えるも首を捻った。
「すまん、あんまり覚えてねえな」
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