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「ああそうだよ。そうでもしないと生きてけなかったからな。俺には家族なんていなかった、だから自分で何とかするしかなかったんだよ。わかるか?親父がおふくろ毎晩殴ってたからよ、非力ながらもそれを庇ったら小学生の俺に言うんだよ、他人のお前が口を挟むなってな。親父もお袋も他人、グレるなって方がおかしいだろ?なあ?」
永井のその顔は笑ってるようにも虚しさに引きつってるようにも見えた。
どんな状況に置かれたって過去を恨んだらところでどうにもならないんだ。
「だから何なんだよ。どんな経緯で悪になったかしらねえけど、それがお前が多くの人間を傷つけたり殺したりしていい理由にはならねえんだよ!強盗殺人なんてそんな恨みもない人をどうすりゃできるんだよ!死刑なんて当然だよな!今も雪乃さん震えてるじゃねえか、お前の勝手のせいで怖い思いしてるじゃねえか!国に死ねって言われたならひっそり逝っちまえよ…誰も傷つけんな」
俺は無我夢中で叫んだ。説得も糞もないような言葉で。
いつの時代もこんな事で泣く人がいるのはおかしいだろ?そういうのが俺は一番嫌いだ。事情なんか知ったこっちゃない。
熱くなっていた。何でかまではわからない。ただ、雪乃さんを助けないとという一心だけではない気がした。
「ああ?強盗だ?死刑になんかなるような割りの悪い事は何もしてねえんだって!」
対抗するように永井もデカイ声で返し、俺は思わずカッターナイフが握られた手を見た。
奴が熱くなると勢いで雪乃さんの首を切ってしまいそうだったからだ。
俺は一旦落ち着く事に決めた。
「死刑になるような事はやってないってどういう意味だよ?」
強盗殺人を死刑に相当すると感じていないのか、それとも強盗殺人自体をやってないのかという言葉のニュアンスが俺にはよくわからなかった。
でも前者と後者じゃ大違いだ。
「何度も言ってるだろ、俺は人殺しなんてやってない。暴行なら何度もあるがな」
「じゃあ何であんたが捕まったんだ?」
「知るか。現場で目撃者が結構居たんだとよ。防犯カメラにも写ってた」
俺はますますわからない。それを証拠っていうんじゃないのか?
「そんな事あるわけないだろ」
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