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「サーシャ行くな!」
いくら外国人で14歳だからってこの状況はわかるはずだろ。何考えてんだ!
俺の焦りとは裏腹にサーシャは至って冷静に永井からカッターナイフを取り上げていとも簡単になぎ倒した。
永井はうわっと声を挙げただけで直ぐに羽交い締めに遭いサーシャに馬乗りにされている。
確かにサーシャは長身だが、それより10センチ以上高くてゴツい男を取り押さえられるなんて一体彼女は何者なんだ…
あまりに一瞬の出来事で俺は唖然となった。危機を脱出した雪乃さんでさえ驚いた表情でサーシャを見ている。
「マジかよ…」
永井を押さえつけたまま、聞いたことのない位の大声でサーシャは怒鳴っている。全部ロシア語だ。感情的になると出るらしい。
「サーシャ!わかったから、だから落ち着け!」
俺が必死で止めてもサーシャは我を失って叫び続けている。
「おいサーシャ!もういいよ!」
俺はサーシャを腕ごとしっかり抱き締めた。それでも物凄い力で暴れたが、負けずに俺もサーシャを放さなかった。
「サーシャ!」
目一杯叫ぶとサーシャは遂に動きを止めた。
「助けてくれてありがとう。怒ってくれたのも嬉しいよ」
俺がそう言うとサーシャはふっと立ち上がり、俺に笑顔を見せた。言葉が完璧に伝わった訳ではないだろうが、いつものサーシャに戻ったことで俺は大きく胸を撫で下ろした。
そしてサーシャは雪乃さんに肩を貸して、一階へと戻っていった。
永井はすごく険しい顔でサーシャを睨む。でも座り込んだままで暴れだす気配はもう無かった。
「なぁ永井、もし本当にやってないなら何で戦わないんだよ?」
「刑が確定したんだ。しかも前科を極めたような俺が信頼される訳ないだろ」
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